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データはなくしてしまったけど、紹介したいので。

国立オペラカンパニー青いサカナ団公演「トスカ」は、中野ゼロ大ホールで行われた公演で、指揮は神田慶一氏でした。

  青いサカナ団「トスカ」

「トスカ」は好きなオペラですが、観たのはこのときだけ・・・・・

でも、興味深い公演でした。

トスカはローマきっての人気の歌姫であるが、まだ20歳にもならぬ若さである(そういう設定だった)。そのトスカに思いを寄せているのが、気鋭の若き画家カヴァラドッシ。トスカによこしまな欲望を抱いているのが、警視総監スカルピア。スカルピアは、若く初々しい二人が愛し合う姿を想像すると、どす黒い憎悪の炎が燃え上がり、二人をメチャクチャにしたくなるのである。

カヴァラドッシは、美と芸術と正義を愛する青年で、友人アンジェロッティがピンチと知れば、体を張って友人を守ろうとし、トスカにまで友人のことを明かさない義理がたい人物である。でも、トスカにはとても優しい(年下の美少女を慈しむように)。こういうキャラクターは案外観客に伝わっていないことが多いような気がするのだが、この公演ではそれがよくわかったのが、大きな収穫だった。

この公演の行われた当時、ちまたは安室奈美恵の人気が全盛だったが、トスカは、ローマの”アムロ”という印象だった。トスカ=シャネルおばさんという固定観念にとらわれていた私には、細身で小柄なトスカは新鮮だった。トスカは恋人にこう言うのだ。

トスカ:「私の全てをあなたにあげる。だから、他所の女の人に目を向けないでね」

マリオ:「わかったよ、僕のエンジェル。キスしてもいいかい?」

トスカはだまって微笑み、カヴァラドッシの仕事場から去るのだが、これがまた実にいじらしかった。

対するスカルピアは、悪役としての迫力が足りない気もしたが、恋人たちが若々しく可愛らしい分、かなり救われていた。

あと、3幕の羊飼いの歌を、少女に歌わせ、その少女が幼いトスカと重ねられ、しかもそれをカヴァラドッシが監獄の中で見た夢、という設定にしたのが心憎い。これに続いて、あの名アリア「星は光りぬ」が歌われるから、トスカを一人残して死んでゆくことを、彼が悲しんでいるのがよくわかるのだ。カヴァラドッシは、自分の命が惜しいのではなく、トスカを愛するあまり悲しいのである。コンアトーンで貫かれた「トスカ」だった。そして、トスカも彼の後を追うように、身を投げる。拙いところもあったけど、心に残る公演でした。

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